自宅不動産の財産分与で頭金の援助がある場合の計算

自宅不動産の財産分与で頭金の援助がある場合の計算方法

結婚後に4000万円でマンションを購入した夫婦で、ローンの残額が2700万円、離婚時のマンションの時価が3600万円の場合、3600万円-2700万円で、1100万円が財産分与の対象になり、これを2分の1にするというのが一般的な考え方です。

しかし、実際は、このようなシンプルな事案は少ないです。

自宅不動産を財産分与にする場合に、よく問題になるのは、頭金を実家等が援助しているケースや、別居期間が長いケースです。

頭金を実家が援助している場合の考え方

例えば、上の例で、マンションの購入時に、代金4000万円の内、頭金として500万円を妻の実家が援助したとします。

実はこの場合の計算方法は複数が提唱されております。

【計算例1】

まず、購入時の価格4000万円の内の500万円に相当する割合を、妻の特有財産と考え、500万円/4000万円で、8分の1が妻の特有財産となります。

離婚時のマンションの時価が3600万円、ローンの残額が2700万円の場合、3600万円-2700万円で、1100万円が純資産評価額になりますが、この純資産評価額の8分の1に相当する137万5000円が、妻の特有財産になるという計算です。
実際に援助してもらった500万円より減額となりますが、マンションの価値にローンが考慮されてしまうため、500万円そのものの返還を求めるのは難しいです。

この特有財産を引くと(1100万円-137万5000円)、残りは962万5000円となり、これを共有財産として2分の1にすると、481万2500円が各自の取り分となります。

結論としては、
夫は、481万2500円
妻は、618万7500円(481万2500円+137万5000円)
となります。

【計算例2】

購入時の価格4000万円の内の500万円に相当する割合を、妻の特有財産と考え、500万円/4000万円で、8分の1が妻の特有財産とする点は同じです。

しかし、特有財産の価格は、純資産評価ではなく、マンションの時価を基準に算定します。
つまり、マンションの時価が3600万円である場合は、3600万円×1/8で、450万円が特有財産の価額となります。

そして、夫婦の共有財産は、純資産評価から特有財産の価額を控除した残額になりますので、
離婚時のマンションの時価が3600万円、ローンの残額が2700万円の場合、3600万円-2700万円で1100万円が純資産評価額
1100万円から特有財産価額を控除すると、1100万円-450万円=650万円が夫婦の共有財産(一人当たり325万円)となり、

結論としては、
夫は、325万円
妻は、775万円(325万円+450万円)
となります。
この計算方法には「頭金が優先的に考慮されており不公平である」という批判もあります。
特にオーバーローンの場合でも頭金の評価額が発生する点は問題でしょう。

【計算例3】

もう一つの計算は、頭金の存在も含め、すべて拠出金額の比率で計算する方法です。
ローン元利金返済額(利払い額と元本返済額の合計)を用います。
この方法は、繰り上げ返済を特有財産でおこなっている場合にも計算しやすいメリットがあります。

計算方法としては、まず各自の拠出額を求めます。
ここでは、ローン元利金返済額を2000万円として試算します。

夫の拠出額=頭金拠出0円+ローン元利支払2000万円/2=1000万円
妻の拠出額=頭金拠出500万円+ローン元利支払2000万円/2=1500万円

夫の拠出額比率 1000万円/2500万円=0.4
妻の拠出額比率 1500万円/2500万円=0.6
純資産評価額 1100万円(3600万円-2700万円)

結論としては、
夫は、440万円
妻は、660万円
となります。
この計算方法はローン元利金返済額を、実際に資料を収集して正確に計算できるかという実務上の問題があります。

【新たに提唱されている計算方法】

「婚姻費用養育費問題研究会」が新たな計算法(鈴木方式)を提唱しています。

頭金の評価=頭金×(時価-ローン残)/(購入額-ローン残)
という計算方法です(「婚姻費用・養育費等計算事例集」・婚姻費用養育費問題研究会)。

上記の例では、妻の特有財産である頭金の評価は
頭金500万円×(時価3600万円-ローン残2700万円)/(購入額4000万円-ローン残2700万円)
で、約423万円となります。
そして、純資産1100万円から423万円を控除した677万円を夫婦の共有財産とし、2分1を分与します。

結論としては、
夫は、338万5000円
妻は、761万5000円(423万円+338万5000円)
となります。

シンプルで分かりやすいという点と、計算資料を収集しやすいというメリットがあります。